STORY

黎明を告ぐ者

 

始まりは一つの「穴」が発見されたことだった。

とある秘境にて発見された、空間に生じた「穴」。
何処に繋がっているものとも知れぬその「穴」からは、或るエネルギーが流出していることが観測された。

研究者達はすぐに、秘境を満たすその謎のエネルギーと、周辺地域の生物達の常識では考えられぬ生態との関連を疑った。
口から炎を吐く蜥蜴。自在に枝を操り、捕えた生物を猛獣のような牙で捕食する大樹。何かしらの特殊な要因が無ければこのような進化は起こり得ない。

直ぐ周辺地域の生物と謎のエネルギー、双方の研究は開始された。
研究の結果が出るのにそう時間はかからなかった。生物に超常の能力を与えた全く新たなエネルギー、人類はこれを「神界の大気(エーテル)」と名付けた。新たな発展を求め、国家間で競い合うように人々は研究を始める。
次々と明らかになってゆく謎のエネルギーの持つ信じがたい力。エーテルを用いればあらゆる事象を意のままに操ることが可能だった。何も無い所から火を起こし、電流を発生させ、物質を凍結させる。
人類の歴史は転換期を迎えたと誰もが確信した。エーテルの研究は神への冒涜だと言う者もあったが、新たな進歩を歓迎する声に呑まれていった。
しかし、神の御業はそう易々と起こせるものではない。より規模の大きな現象を引き起こす為には大量のエーテルの収束が必要であり、最初に発見された「穴」から流れ出る微量のエーテルだけでは、研究にすら事欠くのが現実であった。
十分な量のエーテルを得る方法として、人工的に大規模な「穴」を創り出す研究がすぐに始められた。神の力の片鱗を得た人類にとって、研究はさほど難しいことではなかった。「穴」から染み出るエーテルを少しずつ貯蔵し、十分な量が貯まった時、すぐに実験は開始された。

そうして、人類の歴史は終わりを告げた。

人の手で開かれた、秘境の物とは比にならぬほど巨大な「穴」。そこから這い出てきた者達によって、人類が永い時間をかけて築いてきた文明は一瞬にして蹂躙しつくされた。想像を絶する恐怖が「穴」の向こうからはこちらを覗いていたのだ。
こうしてこの世は「穴」が続いていた異世界と完全に交わり、エーテルが充満した世界は変容を遂げた。生態系の頂点にはエーテルの影響を受け異形の姿に進化した「魔獣」、そして異界の使者である「邪神」が立つこととなった。生き残った人類は全ての文明、文化を失い、新たな世界の支配者への畏怖と共に、被食者として生きてゆくことを余儀なくされた。

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 しかしその後、人類は永い時間をかけ再興を遂げることとなる。世界を満たしたエーテルが加護を与えたのは魔獣や邪神だけでは無かった。全てを失った人類の宗教観や生活様式に、エーテルは色濃く影響を与えた。エーテルを中心に据えた新たな文化を形成した人類は、旧文明が神話となった頃、終末以前とは全く異なる文明を発展させていた。

魔導機械文明。エーテルを利用した魔導機関を動力源とした工業が発展した世界で、人類史は再び大いなる隆盛を迎えていた。
だが、魔獣や邪神の存在は変わらず人々に暗い影を落としていた。どれだけ大規模な城塞都市であろうと、ひとたび「龍」等といった強大な魔獣に襲撃されようものなら、甚大な被害は避けられない。恐るべき天敵に人類が対抗し得る手段はと言えば、運用に難のある大規模な魔導兵器、もしくは一個人で膨大な量のエーテルを使役する能力を持った「魔導士」と呼ばれる存在のみであった。
そういった天敵の存在があって、人々が専ら争っているのは他ならぬ同じ人間であった。「終末」以来、世界の至る処で確認されるようになった「穴」。魔導文明発展の要とも言うべきエーテルの源泉を求め人々は戦い、数多くの国々が覇権を巡り争う世界は、正に戦国時代の様相を呈していた。

 人類同士の骨肉の争いが数百年にも及んだある時。世界中の易学者達は色めき立っていた。ある霊獣の目撃情報が多数報告されたのだ。「黎明を告ぐ者」とも言われる瑞獣。人類の歴史の転換期に姿を現し、人々を導く者を選ぶと古くから伝えられている。
言い伝えは真か虚か。長きに渡る戦乱に終わりは来るのか。来るべき新時代の黎明を告げる者とは―――。

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